加藤哲郎のネチズンカレッジ   netizencollege

研究室 新総合カリキュラム(■情報学研究 ■政治学研究 ■現代史研究) 図書館 イマジン カレッジ日誌(過去ログ)  国際歴史探偵の書斎から神田神保町タウン誌本の街』誌提携)

1 竹久夢二の2枚の「ベルリンの公園」

2 松本清張『球形の荒野』のモデルは崎村茂樹か?

3 福本和夫とゾルゲのドイツでの一期一会

4 宮本百合子「こわれた鏡」と「日本のソルジェニツィン」勝野金政

5 九段坂野々宮アパートの1937年末ーー岡田嘉子とアイノ・クーシネン

6. パスタの『壁の穴』から覗くCIAから日本文学まで

7 占領期時局雑誌の興亡ーー『真相』対『政界ジープ』

8 トロツキーと佐野碩のメキシコ

9 占領軍に検閲された「世界のトヨタ」の社内報

戦争は一人、せいぜい少数の人間がボタン一つ押すことで一瞬にし て起せる。平和は無数の人間の辛抱強い努力なしには建設できない。このことにこそ、平和の道徳的優越性がある」(丸山眞男 )、■加藤「『国際歴史探偵』の20年」、 ■「日本のコロナ対応にみる731部隊・100部隊の影」, ■「戦前の防疫政策・優生思想と現代」 、■「 コミンテルンの伝統と遺産」、 ■30年前の「日本共産党への手紙」、 ■岸惠子主演『真珠湾前夜』が可能にした学術的ゾルゲ事件研究」、 ■「ゾルゲ事件についての最新の研究状況」(映像編)論文編)

情報の海におぼれず、情報の森から離れず、批判的知性のネットワ ークを!

2026年7月 月例時評 

ワールドカップをスパイクから観る地経学風文化人類学?

U.S. President Donald Trump and British Prime Minister Keir Starmer speak next to Japanese Prime Minister Sanae Takaichi as they wait for a family photo during the G7 summit, in Evian-les-Bains, France, June 16, 2026. REUTERS/Isabel Infantes/Pool

● アメリカ大統領トランプは、80歳になりました。6月14日の誕生日までに、イスラエルに引き摺られて乱暴に始めたイランとの戦争を、思うようにならず嫌気がさして、止めたかったようです。6月14日に14項目のイスラマバード合意案をまとめ、G7が開かれたパリのヴェルサイユ宮殿で17日に署名しました。内容は、誰が見てもイランの主張に譲歩した、かつてのオバマ大統領時代の包括的合意よりも後退したものでした。最も基本的なイスラエル・レバノンを含む第一項の戦闘終結宣言は、60日の最終合意期限を待たずに、早くも破られ報復合戦です。

● 80歳の大統領は、ほぼ同年輩の私から見れば、認知症初期段階(MCI)です。物忘れが激しく、その自覚がありません。ホワイトハウスに格闘競技場を作って誕生日を祝い、現役なのに250ドル紙幣に肖像を印刷させ、首都の文化の殿堂JFケネディセンターの理事会を解任してまで自分の名前を強引に押し込もうとして、これは裁判で違法とされました。息子たちや娘婿には戦争Deal外交のおこぼれ利権を平気で分配、王室を気取ります。G7サミットの日程を遅らせてパリに出かけても、「同盟国」首脳を侮辱し悪態をつき、イタリアのメローニ首相とさえ険悪な関係を作りました。ホスト国フランスの譲歩で何とか体裁を保ったものの、かつての「自由と民主主義」の価値観を共有した結束はありません。

● トランプが去ったフランスやドイツは40度を超える猛暑気候悲嘆[Climate Grief]という若者の不安・絶望が広がっています。大統領を拉致したベネズエラは二度の大地震で数千人の犠牲者、女性首相がトランプに抱きつき媚びを売ってまで石油危機をしのごうとした日本には地震とダブル台風・豪雨被害ーー気候変動を否定し、本国では No King 運動が広がるトランプは、まるで疫病神です。いや、高市首相だけはサミットでもトランプから「私の最大のファン」と持ち上げられたから別だと抗弁し、対外防諜の「スパイ防止法」を望む高市早苗ファンは、海外での日本政治評価を、冷静に判断すべきです。いまや中東・中韓が台頭するFIFAワールドカップの主要スポンサー企業に、2014年SONY撤退以来、日本企業は入っていません

● G7開催国フランスでは、トランプが夕食会で再び真珠湾攻撃にならった奇襲を持ち出し、高市首相と口論になり他国の首脳が仲介したと報じられ、イギリスの有力紙『タイムズ』は、高市首相がファーストネームで語りかけたスターマー首相の英語がよくわからず、例の媚びへつらいスマイルでごまかした外交上の非礼を報じています。アメリカでは、高市首相が松下政経塾在籍中に米国下院シュローダー議員のもとで「コングレッショナル・フェロー Congressional Fellow(金融・ビジネス)」として立法活動に携わったとする公式経歴に、シュローダー事務所で一緒だった古参スタッフが、彼女はワシントン事務所の「コングレッショナル・フェロー」ではなく、選挙区デンバーで事務を助ける書類コピーなど「コングレッショナル・インターン」だったと証言しています。経歴詐称疑惑の再燃です。

● そんなもとで、高物価に苦しむ庶民・消費者には顔を向けず、国旗損壊罪、議員定数削減とか、皇室典範旧宮家養子案とか、消費税は1%とか、主権者国民不在でピント外れな政策執行に邁進する内閣は、長くはないでしょう。すでに若者と女性の支持率が下がっていると言いますが、国会答弁も記者会見も嫌う「ひきこもり」で、「中傷動画作戦「サナエ・トークン」疑惑へは無回答。円安のもとでの株価の乱高下と野党の弱さが「サナエノミクスの暴走」を許しているかたちです。しかし石川知事選から杉並区長選にいたる地方選挙における自民党候補の敗北は、高市ポピュリズムの上滑り・根無し草をも示しています。

● 日本はブラジルに惜敗しましたが、FIFAワールドカップ2026の決勝トーナメントは、7月20日まで続きます。ゴルフや野球と違って、フットボールサッカー)は、もともとボール一つでどこでも遊べる庶民的スポーツです。中南米や中東・アフリカでは、国技に近い大衆性を持ちます。イランでもウクライナでも戦争は続いているのに、FIFAワールドカップ2026は、トランプの建国250年にFIFAが乗せられて、これまで以上の商業主義的スポーツ祭典になりました。カナダとメキシコは部分的に加わりましたが、地政学・地経学により、グローバルサウスからの出入国制限からルール変更まで、厳しく管理されています。米国でも日本でも、失政の目くらましになっています。私にとっては、幾度か客員教授で滞在したメキシコで一部開催に反対デモが起こっている理由が、「気流の鳴る音」を聞いた体験からよくわかるのですが、日本ではほとんど報じられません。ここでも、メキシコのグループAで1位の予選突破が、目くらましになっているようです。

● そこで、地経学と文化人類学(?)の視角から、日本のいなくなったワールドカップを見続ける、にわか研究を試みます。途方もない高額チケット・放映料を許すFIFAワールドカップ2026の問題性を、調べてみました。端的には、今年はピンクの多い出場選手のサッカー・スパイクシューズをめぐる、アディダス、プーマ、ナイキの契約合戦です。アディダスとプーマが、もともと兄弟会社であることはなんとなく知ってましたが、1936年ベルリン・オリンピックでダスラー兄弟商会が脚光を浴び、戦後に両社が分かれてペレマラドーナのシューズで代替わりの骨肉の争いになり、ワールドカップを揺るがしてきた簡単な歴史は、いくつもの you tube 映像 が教えてくれます。

● ナチス入党とベルリン・オリンピック、ゲシュタポ・ユダヤ人問題との関わりや、両社の生まれたドイツのヘルツォーゲンアウラハという小さな村から多国籍企業になるプロセスまでが気になって、ウェブを駆使して調べてみました。アメリカのナイキがアジアの低賃金労働に依拠して加わり三つ巴のライバルになる関係、最新の中国企業によるプーマ買収説まで出てきます。ユダヤ人問題・戦争との関係を含む詳しい日本語の書物として、 バーバラ スミット 『アディダスVSプーマ  もうひとつの代理戦争』〔ランダムハウスジャパン)があることを知りました。まだ読み始めたばかりですが、7月の決勝まで、読み進めていきます。

● かつてベッカムとアディダスの巨額生涯契約が話題になりましたが、今大会のスパイクシューズで言えば、日本選手は久保建英ほかアディダスが多く、主将予定だった遠藤航はプーマ上田綺世はナイキと分かれているそうです。7月の決勝トーナメントでは、フランスのデンベレやアルゼンチンのメッシがアディダス、ブラジルのネイマールはプーマ、ポルトガルのロナウドはナイキで駆けまわるそうです。

● 今月の読書としては、全く毛色の異なる政治思想史の河野有理『日本史はいかに物語られてきたか』(新潮新書)と、社会運動史の黒川伊織『神戸<生きられた運動体験>の貫戦史』(小さ子社)を紹介するつもりだったのですが、『アディダスVSプーマ』があまりに面白くなったので、詳しいコメントは、また別の機会にします。両書とも、20世紀の歴史を考えさせる、オススメ本です。

● 恒例「国際歴史探偵の歴史から」を連載している神田神保町・御茶の水タウン誌『本の街』は、もともと1980年に神田古書店連盟の広報誌として創刊され、45年間通巻500号以上続いてきた由緒ある雑誌であることを、初めて知りました。そろそろ第12回で1年になるので連載を止めようかと問いあわせたら、いやいや100回以上の連載もありますから続けてくださいと編集部に言われ、気がついた次第です。すでに、7月号の第9回「占領軍に検閲された『世界のトヨタ』の社内報」はウェブでも公開しましたが、7月10日頃に、8月号第10回「久米宏が戦後50年に発掘した可児和夫」が発売され、ウェブでも公開します。お楽しみに。

ネチズンカレッジ2025年10月新規開講コース案内

2025年9月の新規開講に当たって、30年近い「ネチズンカレッジ」の伝統と実績を引き継ぎながら、SNS時代にマッチした新たなコースを構成していきます。

ブログ;今月の世界と日本

情報学中心のカリキュラム再編成

最近の研究から:731部隊・100部隊とゾルゲ事件

図書館:書評と資料紹介、読者の寄稿

イマジン:9・11と3・11の情報戦の記録

Global Netizen College (in English)

「ネチズンカレッジ」の30年(過去ログ)

 Since Aug.15,1997で、2020年1月、2025年9月に大幅改訂しました。開設以来の、ちょっと嬉しく恥ずかしい話。WWW上の学術サイトを紹介するメール マガジン“Academic Resource Guide”第3号「Guide & Review」で、本HPが学術研究に有用な「定番」サイトに選ばれました。ありがたく また光栄なことで、今後も「定番」の名に恥じないよう、充実・更新に励みます。同 サイトは、学術研究HPの総合ガイドになっていますから、ぜひ一度お試しを! 「Yahoo Japan」では「社会科学/政 治学」で注目クールサイトに登録され、特別室「テル コ・ビリチ探索記」が「今日のオススメ」に、「IMAGINE! イマジン」が「今週のオススメ」に入りました。「LYCOS JAPAN」では「政治 学・政治思想」のベストサイトにされていましたが、いつのまにか検索サイトごと「Infoseek」に買収され、「学び・政治思想 」でオススメ・マークを頂いたようです。『エコノミスト』では、 なぜか「イ ンターネットで政治学」の「プロ」にされましたが、河合塾の「研究者インフォー メーション 政治学」では「もっとも充実した政治学関係HP」、早稲田塾の「Good Professor」では、「グローバ ル・シチズンのための情報政治学を発信」という評価をいただきました。「日経新聞・I Tニュース」では「学術 サイトとしては異常な?人気サイトのひとつ」として、「リクルート進学ネッ ト」にも顔を出し、「インターネットで時空を超える大学教員」なんて紹介されました。

 朝日新聞社アエラ・ムック『マスコミに 入る』で、元勤務先一橋大学の私のゼミナールが、なぜか「マスコミに強い大学 」のゼミ単位東日本代表に選ばれ「堅実・純粋な感 性」を養う「社会への関心が高い『問題意識』の強い学生が集う」ゼミナール として紹介されました。「 ナレッジステーション 」には、「政治学 ・おすすめ本」を寄せています。早稲田大学客員教授の時に、共同通信配信全国地方紙掲載「こんにち話」で「国際歴史探偵 」と認定していただき、法政大学大原社会問題研究所で「『国際歴史探偵』の20年」を話させていただきました。

 その後、中部大学「アリーナ」誌で、なぜスターリン批判に入ったかの1970年代の話とモスクワ日本人粛清に関わるアメリカ共産党日本人部の話を、その延長上で「等身大のゾルゲ事件研究」について、毎日新聞東京新聞のインタビューに答えています。恥ずかしながら、ありがとうございました。

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学長 加 藤 哲 郎  Dr. Kato Tetsuro     

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