加藤哲郎のネチズンカレッジ   netizencollege

研究室 新総合カリキュラム(■情報学研究 ■政治学研究 ■現代史研究) 図書館 イマジン カレッジ日誌(過去ログ)  国際歴史探偵の書斎から(神田神保町「新・本の街」誌提携)

1 竹久夢二の2枚の「ベルリンの公園」

2 松本清張『球形の荒野』のモデルは崎村茂樹か?

3 福本和夫とゾルゲのドイツでの一期一会

4 宮本百合子「こわれた鏡」と「日本のソルジェニツィン」勝野金政

5 九段坂野々宮アパートの1937年末ーー岡田嘉子とアイノ・クーシネン

6. パスタの『壁の穴』から覗くCIAから日本文学まで

戦争は一人、せいぜい少数の人間がボタン一つ押すことで一瞬にし て起せる。平和は無数の人間の辛抱強い努力なしには建設できない。このことにこそ、平和の道徳的優越性がある」(丸山眞男 )、■加藤「『国際歴史探偵』の20年」、 ■「日本のコロナ対応にみる731部隊・100部隊の影」, ■「戦前の防疫政策・優生思想と現代」 、■「 コミンテルンの伝統と遺産」、 ■30年前の「日本共産党への手紙」、 ■岸惠子主演『真珠湾前夜』が可能にした学術的ゾルゲ事件研究」、 ■「ゾルゲ事件についての最新の研究状況」(映像編)論文編)

情報の海におぼれず、情報の森から離れず、批判的知性のネットワ ークを!

2026年4月 月例時評 

高市「媚態外交」では、トランプ「戦場の霧」を止められない!

● 私たちはいま、「戦後80年」でも「新しい戦前」でもなく、第3次世界大戦の真っ只中、しかも重要な当事者になりつつあるのではないでしょうか。きっかけはプーチンのウクライナ侵略であろうが、イスラエルのガザ攻撃であろうが、核軍事大国ロ米中間のかけひきと、ウクライナ・イスラエル・パレスチナ・イラン・中東諸国・中南米での武力衝突の絡み合いです。国際法や国連など国際組織も無視した「力による支配」「核兵器の脅威」が跋扈し、NATOや日米安保など旧来の20世紀的軍事同盟秩序も揺らいでいます。米国やロシア、中国と各国との関係が綻ろんで、BRICSGlobal Southまで巻き込んだ、新秩序への地球的規模での混沌が始まっています。

● 一つの宣戦布告もなく、ミサイルやドローンなど無人兵器の顔の見えない戦闘が続き、核保有・開発の有無、ホルムズ海峡機雷閉鎖など情報戦・認知戦の色彩を強くしながら、宇宙やサイバー空間までをも仕分ける、多極的・多重的な戦争が始まっているのではないか。かつての二次の世界大戦のような明確な同盟・連合関係ができないほどに、合従連衡の在り方は無秩序・無定見で、アメリカ大統領ドナルド・トランプの心身の病が、世界に広がったかたちです。イラン開戦ひと月の『ニューズウィーク』とロイターが共に取りあげた「『戦場の霧』のように[フェイクまじりの]メッセージを発信する」トランプが、すべてを物語っています。

● トランプは、6月に80歳を迎えます。私も80歳が近づいて、蔵書整理など自分自身の「終活」に入ったので、よくわかります。彼自身は正常・正義と思っているかもしれませんが、加齢により全体的認識・合理的思考は、確実に困難になってきています。世界中からの情報を集めて論理的に仕分け情報評価し、「アメリカ・ファースト」という彼の戦略(?)に沿って政策化する能力を、日々失っています。でまかせの戦術ばかりで、戦略がありません。11月の中間選挙に向けて、打つ手が次々と裏目に出て、おそらく自分が何をしているのかも、見えなくなってきているのではないでしょうか。かつて日経新聞が述べていた「世界乱す米大統領の自己愛 歯止めなき『人格リスク』」が、たまりにたまっています。私も最近記憶力が衰えて、80歳とはそういう歳であると、実感します。必要なのは、常識のある正気の賢明な助言者グループと、本人が信頼し心身の状態を率直に相談できる医師です。

● そんな時代に、トランプ同様に信頼できる友人も医師も待たない夢売るアイドル」高市早苗を首相に選んだ日本は、不幸です。近衛内閣の無力から東条内閣へと転換した天皇制日本の日米開戦・軍部独裁を想起させます。国会や官僚制や司法や地方自治がブレーキとして機能しなければ、自民党圧勝を生んだ高市ポピュリズムは、危うい道への地雷になります。これぞ国難です。すでにイラン戦争での石油逼迫に伴い、株価暴落、長期金利上昇、円安160円の「トリプル安」の流れができています。ガソリンの補助金程度では、物価上昇・生活生存危機への手立てになりません。アメリカには、まだ11月の中間選挙の審判がありますが、日本の高市政権は、来年の統一地方選、再来年の参院選挙まで、止める手だてがありません。幸徳秋水の絶望や石川啄木「時代閉塞の現状」の心情がよくわかる、不吉で不安な新学期です。

● この間、益田肇『人びとの中の冷戦世界』(岩波書店、2021年)を読んで、考えさせられることが多くありました。戦争は、時の権力者の意図・意志によるばかりでなく、それを支持し熱狂する国民がいるからこそ起こるのです。本来なら米中会談に備えるためだった日米会談が、イスラエルに引き摺られたトランプのイラン戦争とぶつかり、中東の石油を確保する為の苦肉の「媚態外交」になりました。世界も日本も、空気が一変しました。トランプの要求するホルムズ海峡への自衛隊派遣を、高市首相は自分の忌み嫌う憲法9条まで使って拒否したのだから「したたかな外交」の成功だという見方があります。しかし、米国・イスラエルの国際法違反を指摘する欧州諸国の態度に比して、同じ同盟国でも「媚態外交」は異常です。日中関係を凍らせた「台湾有事」答弁と同様に、大きな代償を払うことになるでしょう。中国にとっては、日本は「東アジアのイスラエル」にみえるのです。30年後に振り返れば、日本の歴史の汚点になることでしょう。

● こんな危機の時代に、大切な人が、次々になくなっていきます。3月14日に、ドイツ・フランクフルト学派批判理論の現代化を牽引したユルゲン・ハーバーマスが亡くなりました。彼の『公共性の構造転換』とコミュニケーション理論は、アントニオ・グラムシのヘゲモニー論・陣地戦論やエルネスト・ラクロウの言説・審問理論、昨年亡くなったジョセフ・ナイソフト・パワー論などと共に、私の情報戦論の重要な下敷きでした。アメリカからは、かつての一橋大学の同僚で、米国の批判的日本研究の先駆けであったハーバード・ビックスが昨年亡くなったという報が、つい最近入ってきました。

● 私にとって一番身近なところでは、私の単著の多くを刊行してきた(株)花伝社平田勝社長が3月24日に亡くなられたという訃報が届きました。知り合ったのは、東大新聞記者として全学連委員長の平田さんをインタビュー取材してからでしたが、東大闘争を経て、故川上徹さんと並ぶ大先輩として、多くを学び、親しくしてもらいました。研究者人生に踏み出してからも、アメリカ留学印象記をまとめた『ジャパメリカの時代』や、ベルリンの壁開放・冷戦終焉を論じて、大きな反響があったが日本共産党からは名指しで批判された『東欧革命と社会主義』『ソ連崩壊と社会主義』など、学界デビューの頃から、お世話になりっぱなしでした。かけがえのない先輩の死を悼み、謹んで哀悼の意を表します。

● 最近でも『「飽食した悪魔」の戦後』など、私の731部隊・100部隊研究関係書は、花伝社から刊行されました。昨年来、平田さん自身の歴史的遺産となった問題作『未完の時代 1960年代の記録』(花伝社、2020年にならって、「民主集中制」など日本の革命運動・社会運動周辺の問題を書くよう勧められていたところでした。平田さんが続編を書けなくなったとすれば、私の『国家論のルネサンス』や『社会主義と組織原理』『コミンテルンの世界像』などをもとに、1970年代から90年代の記録を残すべきなのか、平田さんの遺志をどう受け継ぐべきか、思案のしどころです。

● 神田・神保町・御茶の水のタウン誌『本の街』の連載「国際歴史探偵の書斎から」は、好評のうちに4月号第6回「スパゲティ『壁の穴』とCIA」が発表されました。CIA初代東京支局長とされるポール・ブルムがらみの話です。ウェブ版はすでに更新されています。あらたに『本の街』のホームページが開設され、そこでバックナンバーも読めるようになりました。『日本経済新聞』3月26日号の社会面トップに「そして続く戦後1945−、スパイ・ゾルゲが残した影、御前会議の機密漏洩、政府に衝撃、『防止法』議論、教訓に」という大きな記事が掲載されており、私もコメントを寄せています。日経新聞らしい客観的な記事ですから、ご笑覧ください。

ネチズンカレッジ2025年10月新規開講コース案内

2025年9月の新規開講に当たって、30年近い「ネチズンカレッジ」の伝統と実績を引き継ぎながら、SNS時代にマッチした新たなコースを構成していきます。

ブログ;今月の世界と日本

情報学中心のカリキュラム再編成

最近の研究から:731部隊・100部隊とゾルゲ事件

図書館:書評と資料紹介、読者の寄稿

イマジン:9・11と3・11の情報戦の記録

Global Netizen College (in English)

「ネチズンカレッジ」の30年(過去ログ)

 Since Aug.15,1997で、2020年1月、2025年9月に大幅改訂しました。開設以来の、ちょっと嬉しく恥ずかしい話。WWW上の学術サイトを紹介するメール マガジン“Academic Resource Guide”第3号「Guide & Review」で、本HPが学術研究に有用な「定番」サイトに選ばれました。ありがたく また光栄なことで、今後も「定番」の名に恥じないよう、充実・更新に励みます。同 サイトは、学術研究HPの総合ガイドになっていますから、ぜひ一度お試しを! 「Yahoo Japan」では「社会科学/政 治学」で注目クールサイトに登録され、特別室「テル コ・ビリチ探索記」が「今日のオススメ」に、「IMAGINE! イマジン」が「今週のオススメ」に入りました。「LYCOS JAPAN」では「政治 学・政治思想」のベストサイトにされていましたが、いつのまにか検索サイトごと「Infoseek」に買収され、「学び・政治思想 」でオススメ・マークを頂いたようです。『エコノミスト』では、 なぜか「イ ンターネットで政治学」の「プロ」にされましたが、河合塾の「研究者インフォー メーション 政治学」では「もっとも充実した政治学関係HP」、早稲田塾の「Good Professor」では、「グローバ ル・シチズンのための情報政治学を発信」という評価をいただきました。「日経新聞・I Tニュース」では「学術 サイトとしては異常な?人気サイトのひとつ」として、「リクルート進学ネッ ト」にも顔を出し、「インターネットで時空を超える大学教員」なんて紹介されました。

 朝日新聞社アエラ・ムック『マスコミに 入る』で、元勤務先一橋大学の私のゼミナールが、なぜか「マスコミに強い大学 」のゼミ単位東日本代表に選ばれ「堅実・純粋な感 性」を養う「社会への関心が高い『問題意識』の強い学生が集う」ゼミナール として紹介されました。「 ナレッジステーション 」には、「政治学 ・おすすめ本」を寄せています。早稲田大学客員教授の時に、共同通信配信全国地方紙掲載「こんにち話」で「国際歴史探偵 」と認定していただき、法政大学大原社会問題研究所で「『国際歴史探偵』の20年」を話させていただきました。

 その後、中部大学「アリーナ」誌で、なぜスターリン批判に入ったかの1970年代の話とモスクワ日本人粛清に関わるアメリカ共産党日本人部の話を、その延長上で「等身大のゾルゲ事件研究」について、毎日新聞東京新聞のインタビューに答えています。恥ずかしながら、ありがとうございました。

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学長 加 藤 哲 郎  Dr. Kato Tetsuro     

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